アトラス・アズ・ロマンス

- Collection007 -

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【ファリド】
キャラクターシート

キャラクターシートを読み込んでください。(目安時間10分)

基本情報

※ゲーム上、比較的あたりさわりのない情報です。

昨日の昼下がり。

シリーンと名乗る婦人と鉢合わせたのは、ホレシュ氏の屋敷1階、応接の広間だった。

「あなたもホレシュ先生のお知り合いかしら?」

俺は焦りの声色を抑えながら答える。

「ええ、ここへもたまに。先生とは南のルビヤ・ポロウ区域で知り合いまして」

視界の端、広間の壁にかかる書きかけの地図をたよりに、咄嗟に嘘をついた。

「まさしく、あそこの図にも載る『薔薇の舞う湖』のほとりですよ」

地図の隅のほうに小さく記された歪な湖を指さし、俺は偽りを重ねる。

大丈夫だ。むしろ堂々としていた方が、いぶかしがられないはず。

「そうなのね。・・・あ、私はただ少し立ち寄っただけですから、これで・・・」

シリーンは何やら気まずそうな様子でそそくさと玄関から出ていった。

後ろ姿を見届けた俺は、さしあたっての難局をくぐりぬけたことに安堵の息をついた。

重要情報

※ゲーム上、話しすぎると不利になる可能性があります。

ホレシュ氏を殺害する直前まで、盗みにはいったのが彼の家だったことを俺は知らなかった。

家族そろってこの町場に移住してきたのは俺が幼い昔。両親はすでに他界した。

朝から晩まで身を粉にしても、商店の下働きで得られる給金は悲しいほどに少ない。

温室育ちでわがまま放題だと噂の領主の子女たちが恨めしく思える。

俺には金が必要だった。病に侵されていく妹の命を長らえさせるために。

慌ただしいぶどう酒の送達の道中、町場の外れにひっそりとたたずむ屋敷に目をつけたのは、つい最近のこと。

盗みにはいる覚悟が決まり、久々に仕事の休みを都合できたのが昨日だった。

昼が過ぎた頃。俺は屋敷に到着した。門前に広がる庭の手入れはいきとどいていない。家主が留守にしがちである証拠だ。

屋敷正面の玄関を閉ざす鉄の扉はいかにも重厚である。俺はかねてからの計画どおり、屋敷の裏に回り込み、家に接するように生えている木をよじのぼる。

そして、2階の窓のはめ殺しのガラスを蹴破って中に忍び込んだ。これは正面の玄関を除いて、唯一の侵入経路であった。

その書斎には、インクの匂いが立ちこめていた。地図の記された羊皮紙の束がそこかしこにひしめいている。机の上には、水さえ汲まれていない陶器の花瓶。忙しさのあらわれだろうか。

俺は部屋じゅうをひっくりかえして金品を物色する。

かき集めることのできた金貨はまずまずの量だった。その折りに、図らずも家主にまつわる手がかりをいくつか得ることにもなった。

「・・・ホレシュ殿。優れた地図帳の数々、たいへんに重畳であり・・・」

貴族からの感謝と慰労の旨を伝える書簡。この文面で、俺はようやくこの屋敷の主が高名なホレシュ氏であることに気づく。

「・・・お父様。体調は優れませんが、ポロウ盆地で一緒に暮らせることを希望にしています。こちらの空気はとてもきれい。いつか必ずこの病も治るでしょう・・・・」

半年以上前の日付の便箋。ホレシュ氏には愛娘がいたようだ。衣装棚からは若い女が着るような毛織のチュニックも見つかった。使用の痕跡はなく、まっさらなままだ。

書斎の扉が開いたのは、ほんの数秒の感慨にふけっていたときだ。

「悪いことは言いません!いっしょに審問官のところへ出頭しましょう」

いたのは、整った面立ちをこわばらせる中年の紳士。両掌を向け、こちらを窘めている。

窓の割れる音を聞き、足音を殺して階段を上ってきたのだろう。

俺は無意識のうちに机上の花瓶を手にとっていたようだ。

気づけば、頭部への一撃によって絶命したホレシュ氏が書斎中央に横たわっていた。


逃げるように階段を下りた1階の広間で、俺の心臓は早鐘のように高鳴っていた。

何分も呆然としていたように思える。気を取りなおさせたのは、屋敷の正面の玄関からあらわれた来訪者だった。

「あら、先客がいらっしゃったのね。私はシリーンと申します・・・」

「ファリドです。自分も今しがた到着したばかりで・・・お留守でしょうか」

そんな経緯で、俺はホレシュ氏との出会いについて、でまかせで塗り固めたわけである。


シリーンが気まずそうに屋敷を辞したあと、俺もそこを離れることにした。

彼女がなぜこの屋敷に入って来られたのか、正面の玄関から出ていくときにわかった。

鉄扉の錠はひどく錆びついており、鍵はもはや役割を果たしていないのだった。


町場のあばら家では、病の妹が床にふせって俺の帰りを迎えた。

「・・・今日は仕事、早かったのね。ごめん、私がこんなだから・・・」

「病気なんて、俺が稼いでくればすぐに治せるさ」

どんな罪を背負おうとも。取り返しがつかなくなったとしても。

「そうだ、とある金持ちから気に入られてさ、金貨をいくらか恵んでもらったよ。

まさしく幸運だ。・・・これからのことはあんまり心配するな」

まさしく。・・・嘘をつくときに口ずさむ俺の癖だ。

まさしく。まさしく。・・・それが本当であると、自分自身へ言いきかせるように。


そして今。この尋問室に喚び出され、俺は取り調べを受けている。

おそらく、ホレシュ氏の知り合いでないことが発覚すれば、俺は疑いの目から逃れることはできないはずだ。もっともらしい話を用意しなければならない。

これからの尋問では、他の3人の話をよく聞いておく必要があるだろう。

ホレシュ氏の死後にのこされる彼の家族のことを想像するたび押し寄せる罪悪感。しかし俺はそれを振り払う。

絶対にこの窮地を脱する。そう、妹のためだ。

後悔する暇はない。まさしく、あれはやむを得ない殺人だったのだから。

ミッション

※以下のミッションにしたがってゲームを進めてください。

①盗みに入ったことと、ホレシュを殺したことを隠し通す。
②ホレシュの知人であるようにふるまう。
③金に困っているようなそぶりを見せない。

全員がキャラクターシートを読み終えたら、議論パートへ進んでください。

議論パートへ

概要

あらすじ

もともと、このポロウ盆地一帯はひなびた僻地であった。

とりたてて優雅な風景も、さしあたって便利な要所もない。

蕁麻(いらくさ)の茂る谷あいに、ぽつりぽつりと集落が点在するのみであった。

事情が変わったのは20年前。

とある気ままな地方貴族が、この盆地の開拓と整備に乗り出してからだ。

彼はあまり働かず、家来たちが代わりに働き、下人たちはそれよりも更に働かされた。

なにはともあれ。一団が入植に励んだ甲斐あって、今や盆地中央にはささやかな賑わいの町場ができあがっている。

周辺からの移住も着々と増える今日、ポロウ盆地はさしずめ小さな自治領とも言えよう。


さて。これまでもこれからも盆地の開拓にあたって必要不可欠なものがあった。

それは土地をよく知ること。つまり、地図である。

そこで活躍したのが、有志の測量家たちだった。

中央の町場のあれこれで手いっぱいの領主の一団に代わり、測量家たちはポロウ盆地のはしからはしまで東奔西走。

川、林、谷、道、集落・・・多くの地形と地名の情報をかき集め、地図帳を製作した。

社会への貢献のため。測量家としての誇りのため。

そしてもちろん、地図帳と引き換えにもらえる領主からの報奨金のため。


ポロウ盆地は広い。いまだ地図帳に載らぬ場所もまだまだ残っている。

ここ数年は、金貨を稼ぐために盆地を駆けまわる測量家志望の若人も多くなった。

しかし。そんな新参者どもにおしもおされぬ偉大な測量家がいた。

それが此度(こたび)の事件の被害者、ホレシュ氏である。

南のルビヤ・ポロウ区域、東のバガリ・ポロウ区域、北西のゼレシュク・ポロウ区域・・・

彼はいくつもの辺境地へ足を踏み入れ、羊皮紙に筆を走らせた。

調査、計測、製図、提出、また調査、計測、製図、提出。

続々と描きあげられる何冊もの地図帳は領主たちにも好評で、ホレシュ氏はめっぽう重宝されていたのだが・・・。

とにかく。彼は死んだ。


「みなさんご存知のように、昨晩、ホレシュ先生のご遺体が発見されました」

話しているのは、町場でおこる事件の捜査を任される年配の審問官だ。

「場所は、ご自宅の書斎。死因は、左側頭部にうけた殴打。

ご遺体の近くには、血痕のついた陶器の花瓶が落ちていました。凶器でしょう。

部屋じゅう荒らされていましたし、おそらくそこで殺されたと見て間違いない」

審問官は、木格子のむこう側の4人の男女を見やりながら続ける。

「先生の家の近くには、足の不自由なご老人が住んでいましてね。

そのひといわく、昨日、窓の外から見かけたのはあなたたち4人だったそうです」

4人は、ほとんど牢獄と言ってもいい尋問室にて粗末な椅子へ腰かけている。

「すみません。本来ならひとりずつ取り調べるべきですが、なにぶん忙しくて。

どうでしょう。おたがいの証言を照らし合わせて犯人をはっきりさせませんか」


右隣の別の尋問室であがる声が、4人のいる部屋まで響いてくる。

「あたしが盗人だって言うの!?」

「おいおい、正直に認めたほうが楽だぞ」

激高する被疑者の声。なだめる若い審問官の声。

建築が度をこして質素であるせいだろう。問答は壁越しにつつぬけである。


「ああ、隣がうるさくて申し訳ありません。領主様は開拓のほうにご関心が強くて。

ここの設備や人手には、やすやすと金貨が回ってこないのです」

年配の審問官は白髪頭をさすりながら言い訳がましくぼやく。

「ま、とりあえずみなさんの知ることをつきあわせてみてください。

おたがいをうたぐりあって結構ですよ。わたしも適当に口をはさみます」

審問官は4人に有無を言わせず喋り終えると、最後に疲れをにじませて嘆息した。

「拍子のわるい事件です。・・・我々もホレシュ先生へ報告したいことがありましたのに」

プレイ時間の目安

キャラシート読み込み

10分
議論パート①

10分
議論パート②

10分
議論パート③

15分
議論パート④

15分

※議論パート毎に、新たな共通情報①〜④が追加されます。

推理パート

5分
結末、得点計算パート

15分
合計時間

80分

キャラクター選択

プレイヤーはそれぞれ重複しないようにキャラクターを選んでください。

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