アトラス・アズ・ロマンス

- Collection007 -

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【ギティ】
キャラクターシート

キャラクターシートを読み込んでください。(目安時間10分)

基本情報

※ゲーム上、比較的あたりさわりのない情報です。

昨日の昼前。私は町場の外れにあるホレシュの屋敷へ向かっていた。

身を包む衣は、あえて地味で見すぼらしい木綿を選んだ。

ついふた月ほど前に移り住んだ小さな家は、彼の住まいからもそう遠くない。

私は数週間前から、ホレシュから地図の製作にまつわる知識を教授してもらっている。

親切な彼は、各地への調査の合間をぬいながら丁寧な指導をほどこしてくれる。

インクの匂いの立ち込める彼の書斎で、地図の断片が記された羊皮紙に囲まれながら教養を身につける時間は、私にとってかけがえないものだ。

屋敷への到着も目前というところで見知らぬ中年の男とすれ違った。

「あんた・・・ホレシュ先生のお知り合いかい?」

年齢はホレシュとほとんど変わらない様子。友人だろうか。言葉尻にはかすかに訛りがある。辺境の人間なのかもしれない。

「・・・はい。ギティです。どうぞよろしく」

私は、なるべく普通の若い女に見えるように挨拶を返す。

「俺はパヤーム。先生とは、割と長い付き合いでね」

「そうですか。私は幼い頃から先生にお世話になっています」

会話はそれっきりで、パヤームは町場の方へ帰っていくようだった。

私はしばらく考えた後、自宅にきびすを返した。

ホレシュの家で何らかの集いが開かれている可能性を想像したからだ。


再びホレシュの屋敷へ向かったのは、夕闇があたりをおおう頃だった。

遅い時間になれば、他の来客がいるおそれも少ないだろうと踏んだのだ。

彼の住まいのすぐそこに迫ったとき、正面の玄関を閉ざす扉の前にたたずむ年長の婦人の影を見つけた。

彼女はこちらに気づいたやいなや反対側へ走り去り、姿を消した。

私はいぶかしく思って、手入れのいきとどいていない庭を横切りながら婦人がいた場所に目をやった。

薔薇の刺繍のほどこされたまっさらなスカーフが落ちている。

彼女の身なりに比べて、いくぶんか高級そうに見えた。

不審に感じながらも玄関の鉄扉をおしあける。いつものように鍵はかかっていない。ひどく錆びついた錠が、本来の役割を果たせていないせいだ。

1階の広間にホレシュの姿はなかった。壁にかけられたいくつかの地図はホレシュの記したものだ。いまだ完全には調査しつくされていない南のルビヤ・ポロウ区域や北西のゼレシュク・ポロウ区域についての一部分だ。空白の箇所もある。

うって変わって、階段を上った2階の書斎には異様な光景が広がっていた。

ガラスの割れたはめ殺しの窓。乱雑にちらばる室内。こときれたホレシュの姿。

恐怖と混乱に襲われるなか、それでもかすかに残った私の理性は足を動かし、町場の審問官たちへ事態を知らせるために薄明の道を駆けさせていた。

重要情報

※ゲーム上、話しすぎると不利になる可能性があります。

私の父親は気まぐれな思いつきでポロウ盆地の開拓をはじめた貴族、つまり、この一帯の領主そのひとである。何を隠そう、私はその5番目の子女にあたる末娘で、町場中央の高台にある御殿で甘やかされて育った。

父のもとに測量家たちが謁見にくることはよくあった。提出される地図帳は、日に日に冊数が増えていった。

開拓をおしすすめたい父も、測量家たちの待遇には並々ならぬ気を使っていた。精度の高い地図帳には気前よく報奨金を出すし、製作者の権利の保護にも熱心だ。

少女の頃の私の暇つぶしといえば、地図を眺めることだった。

よく測量家たちにねだって書きかけの地図帳をかしてもらっていた。町場から出たことのない箱入りの私は、羊皮紙をめくるたび遠くの辺境の地へ想いを馳せた。魅力的な地図を見つければ、その一部分を模写してみたりもした。

とりわけ『薔薇』という言葉が付される土地たちに心が躍らされたものだ。

『赤い薔薇の渓谷』、『薔薇の香る小路』、『薔薇の池』、『美しき薔薇の洞窟』・・・。

他にもたくさんあったはずだが、それらの場所が記されているのは決まってホレシュが手がけている地図帳だった。憧れを抱くのは当然の流れだった。

9年前の頃には、すでに父や家来たちから抜群の信頼をうける測量家は何人かいたが、なかでもホレシュは厚遇されていた。彼が豪邸での晩餐に招かれることもしばしばであったが、話せば偉ぶることのない好人物だ。贅沢もしない暮らしぶりらしい。

「私にはギティ様よりいくらか年下の娘がいましてね。毎月の文通が楽しみなのです」

彼には可愛がってもらっていた。体の弱い娘がいて、空気のきれいな遠い地に離れて暮らしているということも当時に知ったことだ。


あれから9年。測量家として開拓に貢献することが、私の野望になっていた。

町場の若者にもそのような風潮が広がっており、時には地図の製作をめぐったもめ事もあるらしいが、自分の胸中では怖気よりも熱意が勝った。

両親や家来にはたいそう心配させたが、ホレシュに弟子いりを志願するということで納得させ、町場の外れに小さな家屋を用意してもらった。

ある種の修行だと言うのに、高価な毛織の衣服やら絨毯やらを持たされたことにはいささか苦笑いしたが、それも貴族らしい過保護の果てなのだろう。

引っ越しが落ち着き、久しく会っていなかったホレシュに事情を話しにいくと、彼は驚いた表情を見せつつも師事をうけいれてくれた。

「ありがとう!・・・そうだ、これ、よければ娘さんに贈ってあげてください」

両親からあてがわれた毛織のチュニックは、遠慮するホレシュへ半ば押し付けるように渡してしまった。新しい自分へ。心は未来への道のりにときめいていた。


そして今。この尋問室に喚び出され、私は取り調べを受けている。

悲劇はようやく実感をともなってきていた。

・・・彼の命と私の夢を奪った犯人を暴く。これは、試練だ。

父に泣きつくこともできるだろうが、私はこの尋問から逃げない。堂々と容疑を晴らす。

もともと、きらびやかな御殿を離れて修養を志したのも、領主の娘であることを隠して目立たぬよう暮らしていたのも、ぬるま湯から脱するためだ。

この場を先導し、真相を解き明かすのだ。そう。今こそ、新しい自分へ。

ミッション

※以下のミッションにしたがってゲームを進めてください。

①ホレシュを殺した犯人が誰なのか考える。
②自分が怪しまれないようにする。

全員がキャラクターシートを読み終えたら、議論パートへ進んでください。

議論パートへ

概要

あらすじ

もともと、このポロウ盆地一帯はひなびた僻地であった。

とりたてて優雅な風景も、さしあたって便利な要所もない。

蕁麻(いらくさ)の茂る谷あいに、ぽつりぽつりと集落が点在するのみであった。

事情が変わったのは20年前。

とある気ままな地方貴族が、この盆地の開拓と整備に乗り出してからだ。

彼はあまり働かず、家来たちが代わりに働き、下人たちはそれよりも更に働かされた。

なにはともあれ。一団が入植に励んだ甲斐あって、今や盆地中央にはささやかな賑わいの町場ができあがっている。

周辺からの移住も着々と増える今日、ポロウ盆地はさしずめ小さな自治領とも言えよう。


さて。これまでもこれからも盆地の開拓にあたって必要不可欠なものがあった。

それは土地をよく知ること。つまり、地図である。

そこで活躍したのが、有志の測量家たちだった。

中央の町場のあれこれで手いっぱいの領主の一団に代わり、測量家たちはポロウ盆地のはしからはしまで東奔西走。

川、林、谷、道、集落・・・多くの地形と地名の情報をかき集め、地図帳を製作した。

社会への貢献のため。測量家としての誇りのため。

そしてもちろん、地図帳と引き換えにもらえる領主からの報奨金のため。


ポロウ盆地は広い。いまだ地図帳に載らぬ場所もまだまだ残っている。

ここ数年は、金貨を稼ぐために盆地を駆けまわる測量家志望の若人も多くなった。

しかし。そんな新参者どもにおしもおされぬ偉大な測量家がいた。

それが此度(こたび)の事件の被害者、ホレシュ氏である。

南のルビヤ・ポロウ区域、東のバガリ・ポロウ区域、北西のゼレシュク・ポロウ区域・・・

彼はいくつもの辺境地へ足を踏み入れ、羊皮紙に筆を走らせた。

調査、計測、製図、提出、また調査、計測、製図、提出。

続々と描きあげられる何冊もの地図帳は領主たちにも好評で、ホレシュ氏はめっぽう重宝されていたのだが・・・。

とにかく。彼は死んだ。


「みなさんご存知のように、昨晩、ホレシュ先生のご遺体が発見されました」

話しているのは、町場でおこる事件の捜査を任される年配の審問官だ。

「場所は、ご自宅の書斎。死因は、左側頭部にうけた殴打。

ご遺体の近くには、血痕のついた陶器の花瓶が落ちていました。凶器でしょう。

部屋じゅう荒らされていましたし、おそらくそこで殺されたと見て間違いない」

審問官は、木格子のむこう側の4人の男女を見やりながら続ける。

「先生の家の近くには、足の不自由なご老人が住んでいましてね。

そのひといわく、昨日、窓の外から見かけたのはあなたたち4人だったそうです」

4人は、ほとんど牢獄と言ってもいい尋問室にて粗末な椅子へ腰かけている。

「すみません。本来ならひとりずつ取り調べるべきですが、なにぶん忙しくて。

どうでしょう。おたがいの証言を照らし合わせて犯人をはっきりさせませんか」


右隣の別の尋問室であがる声が、4人のいる部屋まで響いてくる。

「あたしが盗人だって言うの!?」

「おいおい、正直に認めたほうが楽だぞ」

激高する被疑者の声。なだめる若い審問官の声。

建築が度をこして質素であるせいだろう。問答は壁越しにつつぬけである。


「ああ、隣がうるさくて申し訳ありません。領主様は開拓のほうにご関心が強くて。

ここの設備や人手には、やすやすと金貨が回ってこないのです」

年配の審問官は白髪頭をさすりながら言い訳がましくぼやく。

「ま、とりあえずみなさんの知ることをつきあわせてみてください。

おたがいをうたぐりあって結構ですよ。わたしも適当に口をはさみます」

審問官は4人に有無を言わせず喋り終えると、最後に疲れをにじませて嘆息した。

「拍子のわるい事件です。・・・我々もホレシュ先生へ報告したいことがありましたのに」

プレイ時間の目安

キャラシート読み込み

10分
議論パート①

10分
議論パート②

10分
議論パート③

15分
議論パート④

15分

※議論パート毎に、新たな共通情報①〜④が追加されます。

推理パート

5分
結末、得点計算パート

15分
合計時間

80分

キャラクター選択

プレイヤーはそれぞれ重複しないようにキャラクターを選んでください。

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